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令和3年 – 問34 – 行政書士 民法

問題更新:2022-08-20 18:00:00

問題34 不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でない ものはどれか。

1訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる。
2 損害賠償の額を定めるにあたり、被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、身体的特徴が疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の身体的特徴を斟 酌 することはできない。 3 過失相殺において、被害者たる未成年の過失を斟酌する場合には、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足りる。
4 不法行為の被侵害利益としての名誉とは、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価であり、名誉毀損とは、この客観的な社会的評価を低下させる行為をいう。
5 不法行為における故意・過失を認定するにあたり、医療過誤事件では診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準をもって、どの医療機関であっても一律に判断される。

正解5×

〔3-34〕

解説

1○
不法行為における因果関係の立証は,原則として被害者がする。しかし,一点の疑義もない自然科学的証明を要求すると,被害者の救済は困難になり,不法行為制度の目的が達成できない。したがって,因果関係の立証は,高度の蓋然性で足り,その判定は通常人が疑いを挟まない程度に真実性の確信性を持てる程度でよい。よって,肢は正しい。
<条文> 709条
<判例> 最判昭50.10.24

2○
損害賠償の額を定める際,被害者が平均的な体格・通常の体質と異なる身体的特徴であれば,身体的特徴を考慮して損害賠償の額を決定すべきではないか。しかし,体格・体質は全ての人が同一均質ではない。疾患にあたらない程度の身体的特徴なら,個人差の範囲内である。したがって,身体的特徴が疾患に当たらない場合は,特段の事情がなければ,身体的特徴を斟酌できない。よって,肢は正しい。
<条文> 722条
<判例> 最判平8.10.29

3○
過失相殺では,被害者の過失を考慮するためには事理弁識能力があれば足りる。過失相殺制度の目的は,損害の公平な分担の観点から,被害者の過失を考慮して損害賠償額を算定することである。したがって,賠償責任を負う前提となる責任能力は不要である。よって,肢は正しい。
<条文> 722条2項
<判例> 最大判昭39.6.24

4○
民法723条の「名誉」は,人がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価,つまり社会的名誉である。人が自身の人格的価値について持つ主観的な評価,すなわち名誉感情ではない。名誉毀損に基づく損害賠償請求は,加害者に対して制裁を加えたり,また,加害者に謝罪等をさせることにより被害者に主観的な満足を与えるためではない。金銭による損害賠償のみでは填補できない被害者の人格的価値に対する社会的,客観的な評価自体を回復するためである。したがって,損害賠償請求が認められるのは人の社会的名誉が毀損された場合に限る。よって,肢は正しい。
<条文> 723条
<判例> 最判昭45.12.18

5×
「どの医療機関でも一律に判断される」とする点が誤り。新規の治療法は,専門的研究者の間でその有効性と安全性が是認され,教育や研修を通じて各医療機関に伝達される。技術・設備の普及には一定の時間を要する。したがって,全ての医療機関に要求される医療水準を一律に解するべきではなく,医療機関の特性を考慮して要求される医療水準を決定すべきである。
<条文> 709条
<判例> 最判平7.6.9

短答王国行政書士
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