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令和3年 – 問3 – 行政書士 憲法

問題更新:2022-08-20 18:00:00

問題 3 インフルエンザウイルス感染症まん延防止のため、政府の行政指導により集団的な予防接種が実施されたところ、それに伴う重篤な副反応により死亡したXの遺族が、国を相手取り損害賠償もしくは損失補償を請求する訴訟を提起した(予防接種と副反応の因果関係は確認済み)場合に、これまで裁判例や学説において主張された憲法解釈論の例として、妥当でないものはどれか。

1 予防接種に伴う特別な犠牲については、財産権の特別犠牲に比べて不利に扱う理由はなく、後者の法理を類推適用すべきである。
2 予防接種自体は、結果として違法だったとしても無過失である場合には、いわゆる谷間の問題であり、立法による解決が必要である。
3 予防接種に伴い、公共の利益のために、生命・身体に対する特別な犠牲を被った者は、人格的自律権の一環として、損失補償を請求できる。
4 予防接種による違法な結果について、過失を認定することは原理的に不可能なため、損害賠償を請求する余地はないというべきである。
5 財産権の侵害に対して損失補償が出され得る以上、予防接種がひき起こした生命・身体への侵害についても同様に扱うのは当然である。

正解4×

〔3-3〕

解説

1○
「予防接種に伴う特別な犠牲」とは、接種者の死亡・後遺障害など、生命・身体の特別犠牲をいう。「財産権の特別犠牲」は損失補償の定めがある(憲29条3項)一方、生命・身体の特別犠牲には損失補償の定めはない。「予防接種に伴う特別な犠牲」は、損失補償の対象とならないのが筋である。しかし、財産権の侵害より深刻な被害が発生したにもかかわらず、被害者に補償がないというのは、不条理である。そこで、29条3項を「類推適用」し、被害者等を救済すべきと主張される。

2○
「(国家補償の)谷間の問題」とは、国家の行為が結果として違法であるが過失がない場合、国家賠償・損失補償のいずれでも救済されないことをいう。予防接種では、接種者の死亡・後遺障害など、結果として違法であるが、過失を認定できないことが多く、谷間の問題がおきる。そこで、被害者の救済手段として、新たな「立法による解決が必要である」と主張される。

3○
「人格的自律権(または人格的生存権)」とは、個人が人格的生存にかかわる個人的事項を、公権力から干渉されずに自ら決定できる権利をいう(憲13条後段)。その趣旨は、個人の幸福を達成することにある。本来、予防接種における損害は、谷間の問題である。しかし、財産上の特別犠牲には補償があるのに、生命・身体の特別犠牲には補償がない、あるいは不十分では、個人の幸福の達成という憲法13条後段の趣旨に反する。そこで、「人格的自律権の一環として、損失補償を請求できる」と主張される。

4×
「予防接種による違法な結果について」、過失を認定することは困難ではあるが、「原理的に不可能」ではない。例えば、接種担当者による予診が不十分な場合や予防接種行政の過程に組織的な過失がある場合である。このような過失が認定できれば、国家賠償法に基づき損害賠償を請求することができる。

5〇
「財産権の侵害」は損失補償の定め(憲29条3項)がある一方、「生命・身体への侵害」には損失補償の定めはない。「予防接種が引き起こした生命・身体への侵害」は、損失補償の対象とならないのが筋である。しかし、財産権よりも、生命・身体の方が重要であり価値が大きい。「財産権の侵害」が補償されるなら、「生命・身体への侵害」も補償されるのが「当然」である。そこで、「予防接種がひき起した生命・身体への侵害についても」、「当然」に損失補償されると主張される。

短答王国行政書士
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