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令和2年 – 問6 – 行政書士 憲法
問題 6 衆議院の解散に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
1 衆議院議員総選挙は、衆議院議員の任期が満了した場合と衆議院が解散された場合に行われるが、実際の運用では、任期満了による総選挙が過半数を占め、解散による総選挙は例外となっている。
2 内閣による衆議院の解散は、高度の政治性を有する国家行為であるから、解散が憲法の明文規定に反して行われるなど、一見極めて明白に違憲無効と認められる場合を除き、司法審査は及ばないとするのが判例である。
3 最高裁判所が衆議院議員選挙における投票価値の不均衡について憲法違反の状態にあると判断した場合にも、内閣の解散権は制約されないとするのが政府見解であるが、実際には、不均衡を是正しないまま衆議院が解散された例はない。
4 衆議院が内閣不信任案を可決し、または信任案を否決したとき、内閣は衆議院を解散できるが、この場合には、内閣によりすでに解散が決定されているので、天皇は、内閣の助言と承認を経ず、国事行為として衆議院議員選挙の公示を行うことができると解される。
5 天皇の国事行為は本来、厳密に形式的儀礼的性格のものにすぎない、と考えるならば、国事行為としての衆議院の解散の宣言について内閣が助言と承認の権能を有しているからといって、内閣が憲法上当然に解散権を有していると決めつけることはできない、という結論が導かれる。
正解5〇×
〔2-6〕
解説
1×
「衆議院議員総選挙は、議員の任期が満了した場合(憲45条)と、衆議院が解散された場合(憲69条、7条3号)に行われる(憲54条1項)」。「実際の運用では、任期満了による総選挙」は、昭和51年(1976年)の第34回総選挙が、唯一の例である。「任期満了による総選挙」は例外である。肢とは逆である。「解散による総選挙」が「過半数を占め」る。与党と野党の政治的駆け引きにより、内閣不信任・信任決議(憲69条、7条3号)に基づく解散が「原則」となっている。
2× 「内閣による衆議院の解散は、高度の政治性を有する国家行為であるから」「司法審査は及ばないとするのが判例である」(最大判昭35.6.8)。理由は、「衆議院の解散に対する有効・無効の判断」は、高度に政治的な問題である。統治行為論(法律上の争訟として、裁判所による法律的判断は理論的には可能であるが、高度の政治性を有するため、司法審査の対象とされない政治部門の行為をいう)を根拠とする。「解散が憲法の明文規定に反して行われる場合」等の例外はない。統治行為は、非民主的機関である裁判所の判断になじまない。最終的には国民による選挙等で、主権者の政治判断に委ねられるべきだか らである。
3×
政府は統治機構における三権の1つである司法権の判断に、敬意を表すべきである(憲73条1号、99条)。「憲法違反の状態にあると判断した場合にも、内閣の解散権は制約されない」との「政府見解」を発表するはずがない。実際に、「最高裁判所が衆議院議員選挙(昭和58年12月18日)における投票価値の不均衡について憲法違反の状態(違憲状態)にあると判断した(最大判昭60.7.17)」後、政府は同様の裁判を踏まえて、定数の是正を行っている。
4×
「内閣によりすでに解散が決定されて」いたとしても、天皇は、内閣の助言と承認を受けて、「国事行 為として衆議院議員総選挙の公示を行うことができると解される」。理由は、実質的には内閣に解散権 あるとしても、形式的にはさらに国事行為を要するからである。すなわち、憲法7条柱書により、「天 皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」とある。その国事行為に ついて、憲法7条4号で「国会議員の総選挙の施行を公示すること」と規定している。象徴天皇による国 家の行為の権威付けとして、天皇による国事行為を要するからである。
5○
「天皇の国事行為は本来、厳密に形式的儀礼的性格のものにすぎない、と考えるならば」、内閣の助言と承認は天皇の形式的な行為に関してのものである。実質的な解散権が内閣にあるとの規定はない。したがって、この考えによれば、内閣が「国事行為としての衆議院の解散の宣言について助言と承認の機能を有しているからといって」「内閣が憲法上当然に解散権を有していると決めつけることはできない、という結論が導かれる」のは、正しい。 (注)解散権の決定権の所在については、憲法上、内閣にあるとする説と、衆議院の意思を尊重して、 事実上の解散権が衆議院にあるとする説がある。
「衆議院議員総選挙は、議員の任期が満了した場合(憲45条)と、衆議院が解散された場合(憲69条、7条3号)に行われる(憲54条1項)」。「実際の運用では、任期満了による総選挙」は、昭和51年(1976年)の第34回総選挙が、唯一の例である。「任期満了による総選挙」は例外である。肢とは逆である。「解散による総選挙」が「過半数を占め」る。与党と野党の政治的駆け引きにより、内閣不信任・信任決議(憲69条、7条3号)に基づく解散が「原則」となっている。
2× 「内閣による衆議院の解散は、高度の政治性を有する国家行為であるから」「司法審査は及ばないとするのが判例である」(最大判昭35.6.8)。理由は、「衆議院の解散に対する有効・無効の判断」は、高度に政治的な問題である。統治行為論(法律上の争訟として、裁判所による法律的判断は理論的には可能であるが、高度の政治性を有するため、司法審査の対象とされない政治部門の行為をいう)を根拠とする。「解散が憲法の明文規定に反して行われる場合」等の例外はない。統治行為は、非民主的機関である裁判所の判断になじまない。最終的には国民による選挙等で、主権者の政治判断に委ねられるべきだか らである。
3×
政府は統治機構における三権の1つである司法権の判断に、敬意を表すべきである(憲73条1号、99条)。「憲法違反の状態にあると判断した場合にも、内閣の解散権は制約されない」との「政府見解」を発表するはずがない。実際に、「最高裁判所が衆議院議員選挙(昭和58年12月18日)における投票価値の不均衡について憲法違反の状態(違憲状態)にあると判断した(最大判昭60.7.17)」後、政府は同様の裁判を踏まえて、定数の是正を行っている。
4×
「内閣によりすでに解散が決定されて」いたとしても、天皇は、内閣の助言と承認を受けて、「国事行 為として衆議院議員総選挙の公示を行うことができると解される」。理由は、実質的には内閣に解散権 あるとしても、形式的にはさらに国事行為を要するからである。すなわち、憲法7条柱書により、「天 皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」とある。その国事行為に ついて、憲法7条4号で「国会議員の総選挙の施行を公示すること」と規定している。象徴天皇による国 家の行為の権威付けとして、天皇による国事行為を要するからである。
5○
「天皇の国事行為は本来、厳密に形式的儀礼的性格のものにすぎない、と考えるならば」、内閣の助言と承認は天皇の形式的な行為に関してのものである。実質的な解散権が内閣にあるとの規定はない。したがって、この考えによれば、内閣が「国事行為としての衆議院の解散の宣言について助言と承認の機能を有しているからといって」「内閣が憲法上当然に解散権を有していると決めつけることはできない、という結論が導かれる」のは、正しい。 (注)解散権の決定権の所在については、憲法上、内閣にあるとする説と、衆議院の意思を尊重して、 事実上の解散権が衆議院にあるとする説がある。
行政書士試験 令和2年度
- 問3 令和2年 憲法
- 問4 令和2年 憲法
- 問6 令和2年 憲法
- 問7 令和2年 憲法
- 問8 令和2年 行政法
- 問9 令和2年 行政法
- 問10 令和2年 行政法
- 問11 令和2年 行政法
- 問12 令和2年 行政法
- 問13 令和2年 行政法
- 問14 令和2年 行政法
- 問15 令和2年 行政法
- 問16 令和2年 行政法
- 問17 令和2年 行政法
- 問18 令和2年 行政法
- 問19 令和2年 行政法
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- 問25 令和2年 行政法
- 問26 令和2年 行政法
- 問27 令和2年 民法
- 問28 令和2年 民法
- 問29 令和2年 民法
- 問30 令和2年 民法
- 問31 令和2年 民法
- 問32 令和2年 民法
- 問33 令和2年 民法
- 問34 令和2年 民法
- 問35 令和2年 民法
- 問36 令和2年 商法
- 問37 令和2年 商法
- 問38 令和2年 商法
- 問39 令和2年 商法
- 問40 令和2年 商法
- 問41 令和2年 多肢選択式 憲法
- 問42 令和2年 多肢選択式 行政法
- 問43 令和2年 多肢選択式 行政法